降圧剤アムロジピン (カルシウム拮抗薬) による下腿浮腫

降圧剤でアムロジピンというのはよく使われている. 私も飲んだことがある. しかし副作用として下腿の浮腫がある事が知られている. 医師がこのことを知らずに浮腫の原因が他にもあるとして心不全や腎不全を考えながら, 最終的に利尿剤を追加処方してしまっている事もある. 非常に残念な事に経験を積んでいると思われる,または肩書きが相当である,ないしは循環器内科の専門医がこれを知らずにいる. では私はというと, 大学卒業後10年目に当時赴任していた病院で内科の副院長が回診するのに同行したのだが , 患者の下腿浮腫を見て「これはアムロジピンの副作用だろう」と言われたことで初めて知った. カルシウム拮抗剤で血圧を下げている患者の下腿になぜ浮腫が生じるのか? 非常に不思議に思ったが, 私はこれが耳に残って気をつけることにした.すると開業医師や他科で処方された患者に下腿浮腫を生じていることに時々遭遇するのだ. 中止するか他薬に切り換えると数週間で改善する.時々浮腫に生じた色素沈着がそのまま残存することもある. また治癒過程でなぜか左右差を生じることがある. アムロジピンをシルニジピンに変更することで同じカルシウム拮抗剤同士で改善させることもできる. 最近私のところへ紹介された患者さんは浮腫の原因がわからなくて医師も困っていたと言う. 患者は合剤の降圧剤を飲んでおりそこにアムロジピンが入っていることがマスクされていたかも知れない.

Marantz M-CR611 ネットワークCDレシーバー その 3

M-CR611の CD は読み出しができなくなった. ネットワークレシーバーとして直接スピーカーが駆動できて, wifi audio も楽しめる便利な機械であったが寿命短しである. ただ値段を考えるとこんなものかも知れない. また オーディオ界もめまぐるしく変化しているのでどのような商品がヒットするのかわかりにくいのかもしれない. これは完成された商品という感じがしなかった. 少なくともこのように使い勝手の悪い商品は本当に困る. M-CR612 という後継機を買うしかないのだろうか. 型番が一つ違うだけで外観も同じだが, また何年か経過したら同じように壊れるのではと思うと考えてしまう. まずはレーザーピックアップの型番を調べてみよう.

塩酸アマンタジン (シンメトレル®) の光と影

A型インフルエンザに対する経口薬として発売された塩酸アマンタジンはパーキンソン病の治療薬としてよく知られている. 左中大脳動脈梗塞で失語症を発症し, 寝たきりになって, 施設に入所している患者さんが紹介されて脳神経内科を受診した. 紹介状にはこのようにあった. 患者さんはパーキンソン病で薬剤コントロールを受けている様子だが, せん妄があって抗ドパミン薬である抗精神病薬の投与を考えている. ところがドパミン薬であるLドパをすでに飲んでいるので拮抗する薬剤は処方しにくくどう考えたら良いのか. というものである. 従ってパーキンソン病の治療薬のLドパがせん妄を引き起こしているのかも知れない. 私は自分の病院が関わっているのでLドパがどこから処方されたのかを電子カルテでいろいろ調べたがはっきり分からないのだ. 当院の脳神経外科で脳梗塞の治療を受けて塩酸アマンタジンが処方されていることは分かっている. その後は何カ所からの施設を経て現在のところに入所しているが, パーキンソン病の治療をしているとどこにも書かれていないにもかかわらず突然処方に加えられている. 私の推論はこうである. 塩酸アマンタジンはパーキンソン病の治療薬であると同時に脳梗塞後の自発性改善にも用いる. 脳神経外科が後者の適応で処方したのがパーキンソン病の治療をしていると勘違いされて, パーキンソン病の最も強力な治療薬であるLドパを追加処方されてしまったのではないかと. 処方は施設の医師からかも知れない. 患者は麻痺は軽く, 四肢はまったく固縮がなく, 振戦もないのでパーキンソン症状とは言いがたい. 私は MIBG 心筋シンチを依頼して, 心筋への十分な取り込みを確認することでパーキンソン病ではないという最終判断をした. 紹介状に対しては, パーキンソン病ではないのでLドパは中止してけっこうですと書いた. 実は脳梗塞後の自発性低下に対する塩酸アマンタジンは, 一般開業医さんでもよく処方されており広く周知されている. 私も処方したことがあるが残念ながら紹介されてきた患者さんに対して同薬の中止を求めることの方が多かった. この薬は夜間せん妄や興奮などの副作用がよくある. また同薬は他にも著効する事があって, それはパーキンソン病に対してLドパを処方した時に生じる不随意運動に対してである. と言うわけでこの薬の使い方にはコツがあり, 副作用も出やすい. 薬物の功罪はどの薬にもあるものだが, 最近それを痛感した事例であったのでここに記した.

Marantz7 再製作完成

有名な真空管プリアンプ Marantz 7 のコピーを 42 年ぶりに再製作した.CR によるトーンコントロールは cut / boost の方向が逆になってしまったが直さないことにした. 1 kHz 矩形波出力を持つ小型のオシロスコープをお借りし, トーンコントロールがすべての段で正しく動作することが確認できた.最低限度の配線でフォノとCDが試聴できることを確認したのだがいざすべての配線をし終えると低域で発振し本当に参った. 完成にはほど遠いことが判明. 一度基板も外して部品の付け間違いが無いか確認. 一部左右の配線が逆になっている部分があったが直しても発振には変わりなく, ネット記事を参考にフォノ 出力に 1kΩ の抵抗を直列に入れると見事に解決された.

この写真では配線が一部左右が逆になっている. 初心者の失敗である. この写真では 1k Ωはまだ入れていない.

Marantz 7 再製作へ

遂にコロナ感染

自分だけはコロナに罹らないだろうと思っている人は私以外にもたくさんいらっしゃることと推察します.5日前の土曜日の深夜に右の咽頭痛を初発にしました。土日と37.5℃までの発熱と倦怠感がありました.その後咽頭痛の増悪と咳痰です.本日も改善というよりは症状が変わっています.みなさんが言われるようににおいと味がなくなりました.耳が少し詰まった感じがします.これは昨日調子が悪いにもかかわらず大音量でオーディオを聞いてしまったからかもしれませんが.症状がどのように変化増悪するのかがわからないのは嫌なもので、現状でも適当に室内で遊んでいてもよいのか安静が必要であるのかよくわからないのです.ネットにあるごとく症状の増悪に気づかぬことがあるので本当に油断は禁物.とりあえず喘息の薬のシムビコートを試すことにしました.

進行性核上性麻痺の患者さんが急増

超高齢化社会で進行性核上性麻痺という病気のかたは急増している.この病気はパーキンソン症候群のひとつで良い治療薬がなく,リハビリテーションや介護が主体となる. パーキンソン病の方より発症年齢がすこし高く,それによって脳梗塞の合併やその他の認知症を併発していることで診断が困難である面もある. 脳室が第三脳室を含めて大きくなるので正常圧水頭症という脳神経外科が得意とする病気との鑑別も問題となるのだ. 初発症状としては①認知症②パーキンソン症状③小脳失調症などを主体として徐々に進行し,寝たきり,誤嚥性肺炎でなくなる. 注意すべきは小歩,すくみ足, 易転倒性が主体となる「すくみ足をともなう無動」のタイプで,しばしば他疾患(多発性脳梗塞, 正常圧水頭症)と誤解されることがある. 本日は土用丑の日でうなぎ登りで急増する進行性核上性麻痺患者さんのことを思いついた.

負のスパラル 7

統計処理

私が関わった統計処理が必要な論文に最後は EzR というソフトを使用した. これはダウンロードが無料で, 説明も net で見られるので非常に便利であった. 本格的に統計ソフトを使用してきた研究者には SPSS などが知られているのであろうが英語版であったりする. これまでも簡易なもので Stat Mate など色々使用してきたが正しくソフトを使用する知識が必要である. よく知っている人に話を聞いてコツをつかむことが大事である. 特に 3 群間の比較は難しく, 正しい知識が欠かせない. さらにその統計量を英文で記述するにもハードルがある. 他論文の記述を参考にするに越したことはないが日頃から英語論文に親しんでおくことだ. EzR では Excel data がそのまま有効で Excel が操作できる事が必要不可欠である事も論を待たない. しかし, 統計処理は医師が自分でやるのではなくそのために存在する研究補助さんがやってくれるというのが最もすばらしい. 統計処理のような雑用からできるだけ解放されている研究者が伸びていくのではないだろうか.

負のスパイラル 6

人がいない

私の失敗というか私の欠点は人を集められないことである. もし医局員が 10 人いて, 年間 1 論文を完成させ, 互いに他の 9 名を共著にすれば年間 10 本の論文が書ける. それが 10 年続けば何と10 年間で 100 本の論文になる. 論文を書くためにはある程度時間を作らなければならないがそのためには臨床に割く時間を save しないといけない. 人がいないと臨床に忙しくて論文は書けない. 忙し過ぎると人は集まらない. 人がいないと論文は書けない. 忙しいし論文も書けない. これこそ究極の負のスパイラルである. しかし逃げ口上というか口実というか, 忙しいので論文は書けなくても良いか, という気持ちにもなる. これもまた新たなる負のスパイラルをもたらす. 人気のある医局には人がたくさん集まる. 人気の無い医局は益々人が減る. 臨床にかまける時間を save する手段のひとつは逆紹介である. 忙しすぎると逆紹介する余裕がない. でもそれは割り切ってそうしないとまたしても負のスパイラルである. しかし雇っている側としては売り上げもあるのでやたらと切り捨てることもできずにそこはジレンマである.

負のスパイラル 5

論文を書くには

臨床研究を論文にするには通過しなければならない関門が多数ある. 審査の前提に研究者は研究倫理に関する講習を受けている必要がある. CITI のやっている e-learning APRIN というのである. これは結構な時間がとられる. 世の中には色々悪巧みをしてインチキな論文を書く人がいるのでこういう教育は必要なのだ. それを前提に研究計画調書, 研究倫理調書, 利益相反調書などが課せられる. 多少文言は間違っているかも知れないが. 研究計画は一度提出すると変更がきかないという前提があるのでこれらの書類を作成するときには研究計画がきちっとできていないといけないし患者の数なども書くのである程度研究自体が進行していないといけない. 患者さんのデータを使用して論文を作成するには患者さん個人の承諾が必要である. 薬剤の治験では書類で患者さんに承諾と署名を頂くが, 研究でも同じ事. 十分な研究計画に基づかない多数例の後ろ向き研究では承諾を得ておらず論文にはできないんだとあきらめがちだが何とものすごい裏技がある. opt-out という方法である. 一定期間にこの施設である疾患で受診した方の内このような基準を満たした場合に研究に繰り込んだ結果このような研究論文になったが何かご意見がありますかという文章を net 上に公開するのである. まあほとんど異論を唱えられることはなかろう.  こうしたことが必要なのは論文は必ず何らかの組織による倫理審査を受けたという文言が必要であり,それがないとそもそも投稿ができないのだ. 実は症例報告にはこの倫理審査が不要という考え方があって, 倫理審査については not applicable で通している文献もある. さてこのようなことを大変手間かけてやっている内に論文はある程度書き進むが, 日本語で書くのが無難である. 英語にはそのあとで変換すれば良い. 私なら deepL に任せる. 一文ずつ訳すが, 訳が気に入らなければ直すのは日本語である. 英文が適切かどうかが分からない人にはお勧めできない, 英文をある程度読んできた古参医師に任せた方が良い. 投稿先は最も困るが最低でも PubMed に載っているのが良い. Impact factor にはあまりこだわらない方が良い. ところでこの文章はどこが負のスパイラルかおわかりだろうか. このように労力を費やし複雑なプロセスを経て論文として結実したものの一体このような事がわが人生にとってどれほど有益なものであったかと考えたのだ. 少なくともこのような努力をいくつかした結果私は完全に燃え尽きて, このようなことはもう二度としたくないという気持ちに陥ったのである. 負のスパイラル 1 の私の健康が少々損なわれ事も多いに加担している. とにかく自分の健康が最も大事, 次には家族が大事.

負のスパイラル 4

症例報告

症例報告は臨床研究ではない. evidence based medicine (EBM) の見地からいうと症例報告にはこの EBM がないのである. ある患者にある薬を投与したらこの症状に効いたという報告は何の価値もないというのである. そのようなことは偶然でも自然経過でも説明可能だからだ. ある薬が有効であるという事をいうには相当用意周到な研究の結果に基づくわけだ. 従って症例報告では治療効果は言わないのが得策である. 主として症状, 診断, 検査, 経過などに基づく考察が必要と思われる. 私はこれまで症例報告を中心に論文を書いてきたが正直それに時間と労力を傾注しすぎた. また インパクトファクターは不要であり, 必要なことは PubMed で検索されて, より多くの人の眼にふれることである.