Marantz 7 再製作中

Marantz 7 製作に再挑戦

42 年前にこの往年の人気真空管プリアンプのコピーを製作した.  2022年, 現在手に入る部品でもう一度製作する決意をした. 参照にした記事は前作と同じ. このプリアンプを真剣に再生産している方のブログ記事にも刺激を受けた. 原機のデザインや回路にはあまりこだわらず比較的安価に手に入った部品で製作することにした.  問題は必要な部品が代替品含めて現実に手に入るか否かである. 難しいロータリースイッチや電解キャパシターなどから検索し, 入手のめどが付いた段階で順次発注した.  MN 型のボリューム (左右のバランスボリューム) は手に入りそうになかったが, 幸運な事に職場の S 先輩からそれに近い AC 型 2 連ボリュームを譲っていただけた. ところがあとで気付いたことはオイルコンデンサーの 0.47 μF がどの店も品切れなのだ. ヒグチ電子の Vitamin-Q というやつの入荷のめどが立っていない. と思っていたら三栄電波 (無線ではない) でデルリトモ製の物が手に入った. ネットは本当に常時しかも隅々まで検索する必要がある.

シャーシは摂津金属の RU-150N を選択した. これは JIS 規格の汎用型で, 値段も手頃であった. 摂津金属はアイデアルとして知られ, 以前は管球アンプのシャーシも製作していた. ネタ本にはこのメーカーの FE4000 が使われたがもちろん今はない. 前面は 4 mm, 後面は 2 mm 厚のアルミ板だが, 加工は大変であった. ハンドニブラーは宝山製の古いものを使ってみたが途中で投げ出した. 金属の鋸切りも糸鋸も購入したがどれを使用しても非常に苦労する. 要するに根気が必要である. ボール盤は 1-2 年前に購入した東洋アソシエイツ 小型ボール盤 (DP2250R 16110,  定価12773円) を使用した. このボール盤はドリルチャックが運転中に外れてしまう (危険) ので困っていたが, ネットにはテーパー部を脱脂して, ハンマーでたたき込むと書かれてあり, 随分乱暴な話だが何回もそのようにしたらなんとか外れなくなった. しかしたたき方に工夫をしなかったせいで刃先がぶれるようになってしまった. この値段なので仕方ないか. しかし後日談としては取扱説明書が見つかって, ドリルチャックの正しい付け方が説明されていたし, もっと驚いたのはハンドルがきちんとねじ込まれないのは製造上の欠陥だと思い込んでいたが30度近く斜めにネジが切ってあってその方向で回せばちゃんと締まることであった.ドリル刃の方はステップドリルビットセットというのを購入した. これで 6mm 以上の孔を開けることができる. しかし穴を開ける材料をきちんと固定しないと騒音が激しい. と言うかドリルの回転数が高すぎるのですこし下げないと騒音のもとである. また事故が起きる危険性を感じる. 先輩の S 氏が交流 100V ドリルのコントローラーを 3 種類も作製, それらをお借りすることができた. そのうちのひとつは双方向サイリスタを使用した電力制御器というものである. 以前から相談はしていたからか私が工作に困るであろう事を想定して色々助けて下さった. さてこの機械でドリルの速度を調整すると低速回転ができるので騒音から解放され, 安全性も高まるので大変良い.

穴開けの道具

上は東洋アソシエイツ 小型ボール盤 (下に見えるバイトは付属のものではない)

上は日立製のドリル. 下はお借りした 3 種類のコントローラー

左からリーマ, ステップドリルビットセット, バリ取り

背面パネルの真空管を出す部分の加工が最もやっかいで 2mm 厚アルミ板をなめることはできない. 最も効率が良いのは糸鋸作業であるが手持ちでは微妙に動いて効率が悪く, 万力での固定が必要 . 糸鋸を通したまま板を倒すと簡単に鋸歯が折れる. 糸鋸の刃を穴を通して鋸本体に固定する時非常にイライラさせられる.

宝山製の上記ニブリングツールは 2mm 厚まで使用できるが現在は市販されていないようだ. 2mm が切れる道具は現在は他社製でも市販されていないかも知れない.

直線はこの工具も使ってみた.

糸鋸は穴に鋸歯を通してから再度固定するのにかなり手間がかかる.

1mm 厚のパンチングアルミ板を持っていたので使用したがニッパで 1 孔置きに隣の孔とつなげておくと容易に曲げられる.

真空管ソケット用の孔はステップアップドリルではなくリーマーが便利

ベーク板はミスミの特注で, 迅速かつ正確無比であった. ビスが並んでいるが本来は A 端子, B 端子と称する往年の部品が推奨だが手に入らないのでビスを使おうとした. ビスは鉄なので磁性体であり回路に使用することは何か害があるかも知れない. 参照本にはビスで代用できるとあるので信じることにした. しかし実際に配線を初めてみてクロームメッキと思われるビスは極めて半田付けが困難. ビスはすべて外してスズメッキの銅線に変更した. このユニットは 3 本のビスで本体シャーシにネジ止めであるが原機はゴムクッションを介して振動を吸収する機構になっているらしい.

後面パネルはこのように加工したが電源アウトレットソケットの寸法は間違えてしまった.

真空管の開口部の加工は苦労したが, 写真右上方の半周はニブリングツールを, 左下方半周は糸鋸を使用した. 結論は糸鋸が良い. ニブリングツールでは周囲に微妙に傷が付いてしまう. 糸鋸は切る物をちゃんと固定することが作業の効率化のコツと悟った.

上記は 4mm 厚の正面パネルであるが小型のボール盤ではそう簡単に穴開けはできない. CRC 5-56 を切削油の代わりに用いた.

旧 TANGO ST-30S はなぜか自宅に余っていた. 前作の時に間違えて 2 個購入したとしか思えない. これが手元にあったことも再製作着手の決め手となった.

コンデンサー用の袴は最近は別売りで, しかも手に入りにくい. 0.5 mm パンチングアルミをハンズの通販で手に入れ自作した. これは大失敗で, 0.5mm厚は折り曲げに非常に弱く, 再度逆方向に曲げると切れてしまう. 0.5mm ならパンチングでなくアルミ板で, パンチングなら 1mm 厚が必要. いずれも金ばさみで切れるので効率が良い. 大型電解コンデンサーはすべて接着剤を併用して固定した. さて実際の配線に移る前に実体配線図の確認をした. 特にロータリースイッチ周りがわかりにくいのだが, 配線図には誤りがある. 以下に実体配線図のなかに誤りを修正した図を示す. しかしこればかりではなく以下の ロータリースイッチBass と treble 部分の実態配線図はともに boost/cut の方向が逆回転となる決定的な誤りがあるためこの通りに製作するべきではない.

 真空管はエレクトロハーモニクス社の 12AX7 を手に入れた. 同社はニューヨークに本拠を置くエレクトロニック・サウンド・プロセッサを製造する企業である. 1970年代および1990年代, 同社はギター用エフェクターでもっとも名が知られていた. 1968年創業, 創設者はマイク・マシューズ. 残念ながら実物の真空管は Russia と書かれてあり, 本社はアメリカにあっても made in Russia という事で, 同社は ロシアに工場を持っているわけだ. 2022 年のご時世でロシアは真空管などの輸出を禁止したとされているがニュースによれば現在は解決している, 但し値は上がっているようだ.

マランツ 7 基板模式図実体配線図の抵抗が多い側からの図は上記のように真空管のピンが平面で描かれているがキャパシターが多い側からの図は斜めに描かれており, 真空管のピンNo が分かりづらい. 点検を繰り返すたびに誤配線を見つけるので, 思いあまって上記のようにキャパシターなどがどこに付いているのかわかりやすい図を作成しなおした. 42 年前に製作したときによく間違えなかったものだ. この図にはヒーター配線などは省略.

ロータリースイッチ奮戦記

ロータリースイッチの規格は複雑で, かつ業者自身が規格をきちっと理解していないことがある. 段数, 回路数, 接点数, ショーティング/ノンショーティングといった規格があるが段数と回路数を混同したりして正しく表示されていないことがあるので, ネットでは買い物が非常にしづらい. そもそも今回作製の元本に書いてある表示も間違っていて購入に迷うのであった. 未だ手に入れた物が正解であったのかよく分からない. 実は小島製作所と言うところが様々な規格でオーダーメイドしてくれるので, モード切り替え用と入力セレクターは私もここにオーダーした. しかしショーティングがそうでないのかは種本に書いてなかったのでノンの方を選んでしまった. これからその結果が分かると言うことか. スイッチの規格で難しいのは段数が複数あるときに回路数はその分かけ算をしないといけない. 例えば 1 段中に回路が 3 つあって 2 段にするとそのスイッチの規格としては回路数は 6 である. 実は私は 1段に 2 回路あって2 段の物を頼んだのに全体の回路数が 2 と勘違いされて 1 段に 1 回路しかないものを作製されてしまった. 最悪なのはほしい規格の岩通製が安価にネットで販売されているのに気付いたことである. 今回の製作で最も問題になるのはトーンコントロールである. ここにはネットに出ていた四段 4 回路 23 接点ノンショーティング 岩通US43A4123D というのを衝動買いしてしまった. 実は接点数は 23 もいらないのだがトーンコントロールであまりぐるぐる回転させるのもおかしいと感じてこれを選んだ. 4 段も不要であるが途中のウエハーを外して使用を考えていた.

小島製作所特注 1段 3 回路 3 接点 これはモード切替用である

小島製作所特注 2段 2回路 5接点 (発注に失敗した製品で返品させていただいた)

2段 4 回路 5接点 で製作し直していただいた. ちなみに型番は SR26PN2-4-5B30-20R である. 回路数だけは必ず 1 段毎の回路数×段数で表現されるのでかえって誤認が多くなる. ちなみに接点数はかけ算などはしないのだ

トーンコントロール用 岩通製 4 段 4 回路 23 接点

基板の抵抗主体側   配線がほぼ終了し点検中である

基板キャパシター主体側

東京コスモス製 2 連ボリューム A 500KΩ×2 (あまり売られていないが手持ちがあった)

同 A500K ×C500KΩ  人に譲って頂いた MN 1MΩの代替である

引き続きロータリースイッチ周りの配線が一段落した. まずは Treble 用である

次が Bass 用. いずれも只の針金工作であるが非常に難しかった. また正しく配線できているのか非常に不安で何回も確認を繰り返した. キャパシターは μF とpF の表記が混在しているので, 桁を間違えないように慎重に部品を選ばないといけない,

2022年10月21日

最初はまったく音が出ず, もちろん発振することもなく. なんともいえない悔しい思いをする. 最後にした作業から点検してセレクター周りは結線はからげてはあるもののハンダがされていないヶ所をいくつか発見. そしてフォノイコライザーからセレクターに帰ってくる重要なシールドラインがまったく施されていなかったことを発見. 結線を済ませると音が出てまずは一安心である. だがその後も大変であった. まずバランスボリュームが左右逆の動作をする. これも苦労して手直しである (後に左右逆の配線をしている部位があることに気付いた). そして大失敗のは Bass Treble 両者ともにcut / boost の回転方向が逆になっていることである. これは参考にした記事中で作者が逆になったと述べており, 当方としてはまさか実体配線図が誤ったままとは思わなかった. 逆ではないかという疑いはずっとあったので確認を怠ったと悔やまれる. 不安はこうだ. bass ブーストは 6 段階あるはずで逆に 4 段階の cut となっているが, 実体配線図ではそれが明らかに逆になるのである. 前作品の配線は正しくされており, 誤りに気付いて逆の配線をしたらしい. 記事にメモ書きでも残しておけば良かった. 参考記事は 1977 年と 2007 年に出版されているが実体配線図は実に 30 年以上にわたって誤りが放置されている訳だ. 実はロータリースイッチは分解して方向を替えると配線を変更しなくても回転方向を逆にすることができる. わざわざそこまでもする気がしないので放置することにした. トーンコントロールの効きに問題があって bass boost の 1, 2 段目が右より強く効くように感じる. 点検を繰り返し, 一ヶ所の半田不良を発見し改善. 1 kHz 矩形波出力を持つ小型のオシロスコープをお借りし, トーンコントロールがすべての段で正しく動作することが確認できた. あとはレタリングの課題が残された. 配線は途中だがやる気をなくして足踏みしている.

シャーシにはオリジナルより前後長があるので空間が空いており, 工作はやりやすい.

レタリングにはエレコムの高光沢透明ラベルシールを用いた. インクジェット専用紙に word で入力した文字を印刷し, 切り取り, 台紙から剥がしてを貼る. 写真を見るともラベルを貼ったということが分かってしまう. 昔ながらのレトラセットがもはや販売されていないのが残念. 左右傾いて張ってしまうのは根気と技量の問題で仕方が無い.

真空管のシールドを装着したのが下の写真である. 前作にはこれが無かったので雪辱を果たした感がある. 実は非常に安価な部品であった.

旧作品を上に積んでみた.

下写真で, つまみはサトー製であるが素晴らしくきれいにロレットが切られている.

さて重い腰を上げて残りの配線をすることにした.実は実体配線図にはロータリースイッチと RCA 端子の間はシールド線は使用するもののシールドアースはしていない.しかし前作に倣ってできる部分はすべてシールドアースをとった.完成させて音を出すと今までなんともなかったフォノにはハム様の雑音が入りしかも発振様である.回路の一部を触るとぴたりと止まる.不思議なのは左右が逆で右を触ると左の雑音が変化する.フォノの選択をしなおすと再び音が入ってくる.しかも何と左右差が大きい.発振は左側でひどい.電源ハムかそれより低音のなんともいえない音.気が狂わんばかりにいろいろ触って何故か REC OUT に RCA コードを突っ込むと一定度音が消えることを見つけた. Selector から REC OUT への結線のシールドアースを外すとある程度軽減する.雑音を拾わないためにしていると思い込んでいたことが実は雑音を拾う元となった.アースループ形成というのかもしれない.納得がいかないのはシールドは一側しかしていない点である.

(これは直す前の撮影であり, 基板への入出力が一部逆転している. しかしこれは発振の原因ではなかった. 最終的には左下の Phono 出力に 1kΩ を追加した)

超低域~低域発振が出たり消えたりでどうやら潜在的発振機のようだ. 抵抗は 1 個 1 円を使用したのでそれが裏目に出たのか. 42 年前の前作はいい加減に製作してもうまくいったのに,一体何故?  さらに右チャンネルでもフォノ入力で bass boost すると超低域で発振する. 悪いのは両側である. 一度基板を外して部品の付け違いが無いか確認開始. フォノイコライザー部分への入力が左右逆に接続されている部位があることを発見した. どうりで回路を触るときに左右逆の症状が出るはず. さらに思い返されるのはバランスボリュームの左右が反対になっていたことだ. ここでおかしいと気付いて点検するべきであった.  数日間の観察, 低音ブーストやコントラバスの LP をかけても大丈夫. ただしMCトランスを bypass にすると左チャンネルでブーンというのは残存しているが, 興味深いことにこれと同じ現象を経験している方がいた.  ところがバランスボリュームの接続をやり直したら再度発振した. どうやらちょっと配線をいじるだけで発振したりしなかったり. とても不思議である.

いろいろ検索し最終的には参照本の配線図には書かれていないのだがフォノ出力の途中に 1k Ω を追加した. これは発振防止としていろいろなネット記事に書かれてある 1, 2, 3. これによって MC トランスの bypass したときの発振を含めてすべが解決された.  数々の誤りを是正しての完成には嬉しさもひとしおであった(2022/12/2). 1k Ωの追加が音に出てくる変化は不詳. 電子回路の不思議はこの 1k Ωを入れても音の大きさには変化がないことである.

Marantz 7 原機の配線図である. このイコライザー部分を取りだしたのが下の図である .アンプの至宝 (別冊ステレオサウンド)  2011/5/26 より.

ネタ本の藤本伸一氏の配線図には上記赤で囲った 1kΩ 抵抗は記載されておらず, わざと省略したのか記載を忘れたのか不詳である. 幸いであったのは私が 42 年前に作製した物は当然この 1 kΩ が無いのだが発振しなかったことである. 今のように net がない時代に誰か相談できる人がいただろうか. 名古屋のアメ横に相談に持って行く?  ところで新たに作製して発振したものは多くが 1 個 1円の 5% 誤差の抵抗器を使用しており, 誤差の積み重なりが発振の元かも知れない.  部品表を作成したが合計はとんでもない額となった. この中で 23 接点のロータリースイッチは特に高額で, net に出ている 11 接点のもので代用可能だ. さてなんとか発振も静止した旨を S 先輩に報告したが, 抵抗にはほとんど炭素皮膜抵抗を使用したことを話したら, そこは金属皮膜抵抗を使用すべきですよと言われてしまった. 元本もよく読むとしかるべきヶ所にはできれば 1 %を使用すると書いてあった. まあ後悔先にたたずであるが, 可能な限り交換しようという気持ちになった. 炭素抵抗器では雑音の元になるというのであるが, 雑音の意味することがあまり理解できない. メインアンプのヴォリュームを目一杯回してもホワイトノイズが多少残るレベルの残留雑音であるから. しかしもし変更して 1kΩ なしに発振が止まれば面白い. 高価な物を使用するのも性分に合わないのでマルツでKOA の金属皮膜抵抗を購入する計画を立てることにした. ちなみに聴感上は以前のものと変わりないと考えている. フォノ入力を切り替えるのに少々手間と時間がかかるのでそれほどしっかり比較試聴はできていないが…