EC級 輸入電気機関車 EC40

EC40 (10000)

EC40 (10000) 改造後 (マイクロキャスト水野製完成品)

本邦の電気機関車の歴史をひもとくと, 当時の鉄道省が国産初の電気機関車を製造するために, 大正末期から昭和初期にかけて欧米から種々の電気機関車を輸入し, 研究参考にしたことがわかります. この EC40 電気機関車は 1912 年からの運用で鉄道省は 1920 年の設立ですからその前身である鉄道院時代の輸入と判明します. 鉄道院が輸入し日本に陸揚げされた最初の電気機関車は間違いなくこれと思われます. ドイツの AEG 社 と Esslingen 社の合作ということです.  旧信越本線の碓氷峠は有名な難所ですが, そこにあるアプト式レールを最初に走った電気機関車がこれです. 碓氷峠について私には語る資格は全く何もありません. 碓氷峠の歴史物語が参考になるかもしれません. この極めてマイナーな電気機関車の模型を手に入れるのは相当後になると思っていたのですが, 思いがけずヤフオクで手に入れることができました. 訳ありの品物で, レストア工作を経て, 完動しました. 問題はアプトへ伝導するギヤの割れです. 購入時にはギヤははずされており, ギヤなしでも走行は可能ですが, アプトのギミックが可動しないため, おもしろみが半減です. この車両は輸入した後の改造後で, もとは白色に塗られたもので, 欧米らしいスタイルです. ヤフオクでは知らない方が路面電車か?という記述をしているのを目にします. 遅れましたがこれは輸入時の姿ではなく改造後です. 輸入時の姿ですがもっと明るい色で塗装され, 重厚というよりは何かピクニック的な印象を受ける車体です. 集電装置がパンタグラフではなくポールなので印象が異なります.

この2連ギヤの小さい方が割れています

ギヤは樹脂製で微妙に収縮しており, いろいろ考えて図の左側のロレットが切られていない側の軸に瞬間接着剤で付け直しました.

これを戻して動かそうとしましたが, 解決しませんでした.

ギヤのひび割れた部分が微妙に開いており, 隣接ギヤとガチッと噛み合って動かなくなってしまいます. 内径を切削して付け直すべきでした. 樹脂とは言っても精密な設計で0.1mm単位のずれで噛み合いが悪くなるようです. 結局ルーターでギヤを微妙に削り成形し, 最終的にフリクション, 異音ともにない状態にできました. 夏に膨張してまた回らなくなることを見越して, 代替のピニオンギヤを探しています. 14歯モジュール0.5でしょうか.

仏壇を連想させるような変わった外観の電気機関車です. しかし手にするとずしりと重く, ディテールに富み, 静粛でスムーズに走行し, 複雑なリンクの動きを見ていると実にすばらしい製品だと思いますです. 現在このような製品が新品でみられる機会が少なくなったことがとても残念です.マイクロキャスト水野という会社の製品. 今でも模型屋さんで芸術品と言うにふさわしい在庫品を時々見かけその精密さと仕上げの美しさに賞賛を惜しみません.

底面のアプト(ピニオン)ギヤはFleischmann レールではディレイラー部分で線路の一部に接触し擦ってしまいます. ビデオもあります,プレートがないですね.

EC40(10000)原型(鉄道模型社製完成品)

カラマツトレインで鉄道模型社の完成品とみられる EC40 原型を見つけました.無動でしたが絶縁側の集電装置がショートしていたらしく,分解清掃のみで解決した.またリンク装置には微妙なひずみがあり,雑音と走行不良があったが,金床上での形状修正 (平坦化) とバリの切削成形でかなり改善した.上にある改造型の完璧なスケールモデルと比較すると物足りないが,いろいろと手を加える余地も残され, 鉄道模型黎明期らしくシンプルですばらしい製品です.ネットで調べるとここに示したのは側面のディテールが少し不足しており, 発売バージョンによって差があるのか, キットと完成品で差があるのか, あるいは輸入時期によって細部に差があるのか不詳である.第三軌条からの集電靴は省略されている.

集電ポールのバネ装置はとても上手くできています

絶縁側には上方から踏面に集電シューが当たり,2軸から集電されている.このバネの当たりの強さは走りに影響を与えるため微妙な調製が必要.

エッチングが浅いのでうまく光を当てないとディテールが見えません.繊細なリベットの表現に感心します.是非写真をクリックして拡大してみて下さい.

原始的な,工芸製品の美しさです.

改造前と後を比較してみましょう

旧信越本線, 碓氷線のアプト区間を牽引した国産電気機関車→国産ED級電気機関車ED42へ

国産 ED 級電気機関車 ED40 (アプト)

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