Marantz#7 control amp (copy) 旧作品

Marantz#7 control amp (copy) 旧作品

KT88 single の次に製作したのがこのコントロールアンプである. メモがあり, 昭和 55 年 (1980年) , 私は大学 3 年生であった. 当時総額 4 万円台の部品代であり, 人に見せられない様な手抜き工作が随所にあるが現在でも非常に魅力的な音を聞かせてくれる私には非常に大切な記念碑的作品である. 原器はその回路のみならず隅々まで行き届いた緻密な設計から, 現代においても非常に評価が高いことは, ネットオークションでの高値の取引を見れば論を待つまでもない. さて, この作品のシャーシはアルミの板とアングル材を使った完全自作で, 一部に接着剤も使用. 上蓋はアルミの 1 枚板で, ビニールテープで止めてあった. レストア時にアングル材を利用してタップを立て, なんとかネジ止めにした. 製作後 40 年余になるがレタリングの上に吹いたクリアのおかげで前面パネルはわずかながら光沢を保っている. レタリングと言えばこの妙な字体の 「STELEO」は「STEREO」の「CONSOL」は「CONSOLE」の誤植である. メモによれば購入した Telefunken 社製 12AX7 (ECC83) は 1本 750 円であり, 驚嘆する安価だ. 当時はいろいろな意味で自作天国であった.

上記から真空管の作品のみを取りだした新刊といえる「 蘇る真空管オーディオ・アンプ」 初歩のラジオ編集部編, 2007年7月31日刊では部品表が変更されているのでその部分のみ下にコピーした. アンプ部の取り付け方という図が新刊にもあるが「上」と書かれてあるのは「下」の誤りである.

当時活躍著しかった藤本伸一氏の製作記事であり, 前作の KT88 シングルアンプも同じムックにあった. しかしながら氏の製作記事には問題も多い. 下記の実体配線図通りにトーンコントロール周りの配線をすると boost/cut は逆回転になる. このことは再製作でも明らかとなった. 他にも実体配線図の一部には誤りがある.  真空管周の支持体の設計図にも誤った記載がある. さらに再製作した際に明らかになったのは原器と異なりフォノ出力の途中の 1kΩ が省略されている事である. これは発振防止に必要な抵抗であり, 挿入をお勧めする (2022/12/5 追記). 新作品はこちら.

とにかく新規製作前に旧機の上蓋を開けてみて, 配線がこの実体配線図とは異なることを確認してから作業を始めるべきであった.

背面パネルは手抜き工作で, 真空管は四角い放熱口から触ることができ, ぐりぐりと動かす事でソケットの接触不良を直す事ができる.  MT ソケットはシールドケース付きのものにしてしっかりと固定しなければいけなかったのだが当時は知識がないうえにシールドつきの MT ソケットが手に入らなかったためにこのような形態になったようだ. シールド無しのために雑音を拾っている可能性がある. さてこの前面パネルは実はコの字型の成形がされている. ひょっとするとこれは channel 材というのかも知れない. 私は表面の hair line を引いた記憶がないので加工済みのものが最初から市販されていた可能性がある. コの字型の角は曲げではなく 90 度の鋭角の成形であり, 前面にねじが見えない構造を作ることができている. 現在では特注しないと手に入れることは困難ではなかろうか.

 

レストア時, 電源部分には手を入れることができずに電源用キャパシターの交換はあきらめた. 縦のアルミの仕切りはシールド用であるが手で簡易的に曲げた工作である.

真空管はテレフンケン ECC83

カップリングキャパシターの一部はレストア時に交換した.

トーンコントロール用のロータリースイッチまわりはごちゃごちゃで, よくもこのような複雑な配線ができたものだと感心. このロータリースイッチは大須のボントンさんで購入した中古品と記憶している.

他のプリアンプを試す事もあるがこの作品には特別な愛着があって, すぐに舞い戻ってしまう. 聴感上は華やかで奥深い感じの音である.

夜景撮影を試みたが, 古びた感じになって失敗.

2022年11月追記

新たに再製作して, 概ね完了しかかったところで旧作品のトーンコントロール部分を点検した. まずは低音部.

スイッチの製造メーカーはアルプス社と読めた.

この写真ではうまく説明ができないが, 一段の裏表に接点が設けられている複雑かつ変則的なスイッチで, どうしても 1 ヶ所接点が飛んでしまう. この装置では boost 2 クリックで何も接点がなく, boost 6 (7) (最もboostをかけた状態) と同じ効果になる. 製作したときにはこの接点が使えないことは知っていたが現時点ではどうして使えないのか再確認をすることができた. 次は高音部である.

下写真で182J と書かれてあるのは1800PF のキャパシターで誤って付けた部品である.

配線が間違っていると勘違いして一旦部品を外したところ. このスイッチは LUX 製と判明した. (配線は正しかったので元に戻した)

1k Hz 矩形波入力でトーンコントロールが働いていることを確認. 高音部トーンコントロールのブースト 3 番目で波形がおかしいので点検すると, 正しくは 0.018μF のところに1800pF のキャパシターを付けていたことを発見した (正しくは18000pF). 0.018μF に限り在庫があったので即座に交換. 作業を終了, ついでに結束タイですこし結線をまとめると,すこしはまともな配線に見えるようになった.

真空管ソケットを固定しているコの字型のアルミ板は正しくは上下が逆で, これも元本の誤記載に基づくもの. しかしそのおかげで真空管は上から観察しやすくなっている.  新しい作品では是正し, シールドケースに入れたために真空管の姿は上面からはまったく拝めなくなっている.

上段が旧機で下段が新作品. つまみはその時期に手に入り易いものから選択しており雰囲気が異なる. 旧作のつまみのほうが奥行きがあって重厚である.

新作品は2023年11月に全抵抗を金属皮膜に変更する手続きを経て完成した. 苦労の末にフォノ出力に 1KΩ の抵抗が入っており, これがなければ発振してお話にならない. ところがこの 42年前の作品はこれがなくてもまともな音が鳴っている. さらに元本の実体配線図の通りに作製するとトーンコントロールは boost/cutが逆方向になってしまう. 42年前の作品はそれをきちんと是正して製作されており, その時の苦労はまったく記憶が無いし, 記録もないのだ. これはまさに奇跡的な作品であるとつくづく思う. また, 高音部トーンコントロールの 1ヶ所のキャパシターの誤りに 42 年経過して気付いた. きっとその時は考えたに違いない. 二度と同じものを作製することはないだろうと. そしてかくも長期間良い音を出し続ける事も想像しなかっただろう.

UV211 single Ampへ

Marantz 7 再製作へ

KT88 single amp へ戻る

戻る