Fleischmann 小半径レールの走行を可能にした珊瑚模型 EF57 キットの作製
本邦の機関車の歴史をひもとくと, かって欧米から輸入された種々の電気機関車が存在したことに気付きます. それらの模型は当然外国型ジオラマシーンによくマッチします. 外国型以外にはこの輸入電気機関車をコレクションしようとしました. しかし現行の16番のキットではとてもすべてをそろえることはできず, ヤフオクなどで気長に待つしかありません. そのような中で国産電機ですが車体から前後にはみ出したパンタグラフを特徴とする勇壮な EF57 の姿が気に入り, 幸いヤフオクで珊瑚模型製キットを手に入れることができたので, 早速作製しました. もし外国型レイアウトを走らせれば日本から輸入された電気機関車という設定です. (完成写真ではワイパーの始末がわるく, 後に直しました)
珊瑚模型 EF57 (16番) のキットを私のレイアウトの最外周を走行できるように作製するのが今回の課題です. このEF57の主台車枠ですが, EF50 などと同様に長大で, その長い主台枠の端にデッキが乗っている構造です. デッキは主台車枠と一体化されており, 小さなカーブではデッキごとカプラーも外側に大きく逸脱し, 車両の連結すらできなくなります. 実際キットの指定どおりに台車とシャーシ周りを作製しカーブに置いてみると図のように主台車枠は大きく外側にはみ出ます.
内側に残った先台車と台車枠は干渉します. なんとかうまくできないかと模索し、主台車枠をデッキ部分で切り離し, 先台車のうえにデッキを乗せる方法をとることにしました. 台車枠のデッキを乗せる部分を切り離して先台車の上にのせようという考えです. そして先台車に乗せたデッキ部分がスイスのクロコダイルのように可動するスタイルにするわけです.
上は切断前の状態. 下は切断後組み立てを始めたところです.
先台車はボギーであり, 主台車枠との間に心向棒でつながれ, ある程度の可動性を持っています. 実際に主台車枠を切り離して借り組みをしてみます. この際先台車部分の台車枠は主台車枠と十分な距離を保たないとカーブで再び干渉することになります. そのためには台車枠は切断時にすこし短くしても良いわけです. 切断に使用した工具のリューターは名古屋大須にあるボークスで購入したビルドマスター. 切断にプロクソンの切断砥石を使用しました. 切断中には驚くほど部品が高温になりました.
先台車と上に置くデッキとの接合は固定する部品を作製してネジ止めするのが理想なのですがそのようなことをしなくとも簡単にできます. デッキに付けるステップは左右に渡す梁をもっておりそこから3mm幅の帯板を4本立てることができます. 運がよいことにその幅で台車車軸をはめる内枠がほとんど一致し, 4点での固定ができました.
高さの微調整しながら適切な位置で半田付けします. 作業を進めながら実際にレールの上を走らせます.1エンド, 2エンド側で多少の差があり車両の向きを変えたときに片側の方でより干渉が強かったりしました. 観察しますと微妙に先台車との距離に差があり, これは台車の中梁の位置に微妙な差がある為とわかります.干渉しやすいのは主台車枠と先台車の車輪です. そこで片側の台車で中梁の位置を半田のやり直しで修正します. 結果両方向での走行に支障ないことが確認されました. 車輪には絶縁側の前後2車輪から集電シュー(エンドウ製)を取り付けて集電性能を上げています.
これをしないとFleischmann レールではポイントで停止することがあります. エンドウの集電シューセットは絶縁側からの集電に際しては台車との絶縁を保つためにプラスチックワッシャーとプラスチック製の1.7mmのビスを使用, 自作のキット製品の多くに使用し重宝しています. 1.7mmの中タップは工具屋さんでも手に入りにくくハンズでもしばしば品薄ですが必需品です. サイドベンチレーターの開口は微妙に寸法が小さく, 窓枠を斜めにやすってなんとか収まりました. こういった微妙に寸法の合わない部位があるので慌てずに確実に組んで行くには忍耐と努力のみならず時間が必要です. 半田は余分なところに流れてしまうと十分にキサゲ作業をしておかないと見苦しくなり, この作品も失敗の見本のような部分が多数あります. 砂箱からの砂撒き管は0.4mmの洋白線を用いました. 両側のエアータンクは取り付け用エアータンク台を用いず, 直接床板に半田付けしました. 台を用いると内側が主台車枠と干渉します. また床板に取り付ける側受けという部品ですがこれも台車枠と干渉しますので一部を切削します. ライト点灯は今後の課題でとりあえず取り組んでいません. パンタグラフは自分で組み上げ工作できるようになっていますが非常に難しく工作のしがいがある部分で, メーカー製に変更したりせずに忠実に作製し楽しめました. 最終的な取り付けですが碍子のセットは貧弱なものだったので手持ちのエンドウ製碍子セットを合わせるとそこに付属の1.2mmビスがぴったり合いました。
塗装
台車は初めてブラスブラックという製品で黒染めを試みました.当方の技術が未熟でうまく染まらないところには半田が残っていおり, あらかじめ相当に入念にキサゲ作業を要します. 黒染め中には部品を放置しないでよくブラシでこするのもこつのようです. 結局染まらないところがあるのは仕方なくあきらめて, トビカトップガードで隠しました. 屋根も同様に黒染めとトップガードです. 半田用の黒染め液を併用使用するという方法もあるかもしれません. 車体は造形村(ボークス)のサーフェイサー(灰色)をざっと吹いた上にグリーンマックスのぶどう色2号をエアーブラシ(やはり造形村製)で吹きました. やや厚塗りになりましたが指紋もつかないような完全なつや消しないしは梨地仕上げのような仕上がりになってしまいました.
外国型鉄道模型と日本型の融合
残念ながら日本型キットでは小カーブが通過できるような設計や工夫が十分されていません. 実は最近の完成品では小カーブ対策が取られたものが出現しており, このような改革をどれほど待っていたかとおもいます. 世界共通規格はグローバル化の原点で, せっかく線路幅の規格が同じ日本型と外国型です, 両者の壁を取り去って日本型の車両が欧米型のレイアウト上の小カーブに対応するように工夫努力することは模型ファン人口減少に歯止めをかける重要な課題の一つと思います. 外国型では小カーブの走行ができるようによく工夫されており, さらに走行性能を重視した集電性能を上げる機構にも驚くべき工夫があります. 日本の住宅事情を鑑みれば模型世界での小カーブ対応は, 今後の日本型16番の発展を願うためにも必要なことと思います. いずれにしても日本型車両キットを外国型レイアウト上で走らせるには現状では相当な工夫が必要であり, 私の昨今の工作のエネルギーはほとんどこのカーブ対策に注がれています.
Fleischmann のレールですがポイントカーブで日本型車両が脱線しやすいことはよく知られています. Fleischmann レールのポイントでは部分的にフランジで集電している場所があるためフランジが低い日本型はその部位で車輪が沈み, 脱線しやすいのです. その場所に0.5mm程の敷物を引くことと, ガードレールの外側にも0.3mm程のプラ板を貼ると脱線が予防できるようです.
最後に
EF57が小カーブを通過する様子はクロコダイル風にもみえます. レイアウト上を苦労して作製した動力車がちゃんと走行するのを見ると感慨無量です. その他のF級の電気機関車の完成品を本記事のように改造することはできないでしょうか. もし主台車枠が切断可能であれば可能かも知れません(EF50例). 主台車枠を私は写真のように組み立ててから切断しましたので完成品でも切断してしまうことが可能かも知れません.しかし他メーカーの多くの完成品がどのような構造か当方にはわかりません. 部分的に塗装をはがし, 帯板などを使用して先台車とデッキが接合できることが前提です. いい加減な工作を望まないかたはしっかりしたネジ止めを目指してください. (この文章と写真を鉄道模型趣味という雑誌に投稿したのですが受け取ったという返事すら来ませんでした. もちろん次元が違うほど当方の実力不足です)
数年ぶりで引っ張り出してビデオ撮影しました. ゴミがいっぱいついておりすみません.