16番日本型の集電性能向上を重視したレストア-欧米型との出会いからー
約 16 年前, 名古屋の金山近くに定期的に訪れる事があり, 当時のモデルバーン金山店に寄るようになりました. 初めて見る外国型 HO の値段が手頃で驚き, 精密さに魅了され, 当時店長であった小林さんの「はまってみませんか」という言葉に抵抗するすべを失いました. N でも HO でも何でもやれば良いという発想に目の前の鱗が落ちる思いでした. 旧型の日本の製品を何十年ぶりかで動かしてみますと欧米型との違いを考えてしまいます. 欧米型にはまってしばらく Fleischmann のレールでジオラマ製作をしておりました. 多忙を割いての作業であり, 一部の車両は出しっぱなしです. 最初に購入した C タンクは少々レールが汚れていても必ず走るのです. 走らなくなったりぎくしゃく運転の車両が多いなかで, レールの状態が悪いのかショートしているのかを診断するためのリファレンスとしてこの C タンクをレールに乗せます. 放置しても必ず走行するので, 問題がレールにあるのか車輌にあるのかはすぐに診断できます. 外国型ではどの車両も走らせるための工夫が凝らしてあるのですが, まず車輪の材質ないしは表面の加工が違います. 黒っぽく表面が少しざらついており, 黒染めなのかないしは金属の質が異なるのかと思われます. この車輪の踏面ですが全く汚れが付着しません!? 日本型は車輪は多くがクロームメッキで, しばしば汚れが目立ちます. Fleischmann のレールは曲率半径も日本型に比較して小さく, 考え方が異なります. 狭い場所でも走行できるような工夫が行き届いています. 車輪の内側に集電シューがついており, ディンプルによる接点で, バネもよく効かせてあり, 小半径線路を走行できるように車輪が左右方向に大きくスライドする余裕が持たせてあります. 日本でも最近ようやく曲率半径が小さくても走行できる工夫された車両が作られたようで進歩だと思います. Fleischmann, Roco など欧米型の車両は連結器にも工夫があって曲線部では連結器が一定方向に突出し, 車両同志の角が当たらないようになっています.
さて、欧米型スターターキットで一通り遊んだところで先述の小林さんがおっしゃった「もともと鉄道模型には工作する楽しみがあったはずです」という言葉を思い出しました. そして, 最初は小さくて易しいバラキットからはじめ, テンダ-蒸気にも挑戦を果たしています. こうした過程で, 日本型は旧製品,キット含めて集電対策が十分されておらず, 走行不良・ギクシャク運転の悩みの元になっている実感を新たにしたということです.
旧製品のレストアをしていく中で当時小学生の私が何故ぎくしゃくになるのかが十分理解できず解決法がないためにストレスを感じていたことが今さら解明されてきます. 例えば中古のキットで購入した, しなのマイクロのEH10ですが, この製品もいろいろな問題を有し, レストアの記事すらあまりネットで見かけません. きちんと集電対策を施さずにキットを素組みすると車体を左右に振動させながらその振動に合わせたぎくしゃく運転になります. ボルスター部がバネもなくただの接触接点での通電になっているとこうなります. まずは集電対策を考慮しながら製作をしないとまともに走行する車両にならないわけです. もちろんメーカーからみるとキットを組み立てるかたはご自身で集電対策を講じるでしょうと考えているのでしょう. それから2モーター車両ではモーター間での共通通電は必須です. 一つの台車通電でなく共通化することで相当にスムーズな走行になります.
1970年購入のつぼみ堂の ED11未塗装半完成キットは数ヶ所のねじを止めだけで完成し, 初心者向きでした. モーターの回転数が高いのかスピードがやたら速いのが印象的です. 台車はイコライジングがなく, 台車枠がかちっとハンダで固定されており, 経年的に集電性能は低下していました. また走行後に車輪が汚れやすい印象がありました. インサイドギヤ式であるがこのままレストア. このような車両にエンドウの集電シューキットをつけると有効です. 私はもっぱらこれを動力車の集電改良に用います. 絶縁側の車輪からの集電するときに台車の中央の梁(ボルスター)にプラスティック製のワッシャーとプラスティック製の小ねじを用い止めます. ここで直径 1.7mm の中タップが必要です. 最近ではハンズにも置いてありますが, 2mm より細いタップは工具屋さんでも手に入りにくいことが知られています. 1.7mm のネジは最近はあまり流通しなくなっています.
宮沢製 D50 は現在でもヤフオクには定番です. 小学生の当時 1 万円を切った半完成キットはこれしかなかったです. しかし走らせるとどうしてもぎくしゃく運転です. 何 10 年も経過してこれをレストアしようとしますと, 例えばテンダーからの集電では上記の ED11 と同様に, 台車からの集電にはシャーシとボルスターとの間に可動接触接点が存在することに気付きます. この部分はリード線で半田付けしてしまえばぎくしゃく運転は防がれるのです. こんな簡単なことが小学生には気付かなかったわけです.
最近手がけた珊瑚模型製の C55 ですが日本のテンダー蒸気機関車はどのメーカーも本体から1極、テンダーから1極という集電方式のようです, 本体だけでも走行するように集電に工夫すれば走行性能が改善するはずです. また軸受けを介する集電にも確実性がないので車軸ないしは車輪のどこからか直接集電できるような工夫が望まれます.
テンダーがないタンクのほうがキット作成メ-カーにとっては設計がやっかいです. 珊瑚模型の C11 では絶縁側の終電シューに付属している段付きプラスチック製ワッシャーの形状が不整で絶縁が不確実で困りました.
さて改造法によっては集電シューを線路の近くに置く事があり, 脱線時にシューが変形したりショートを起こしやすいこと, さらに外からみえてしまうなどの問題が生じます. こうした点で外国型の集電技術は非常に優れており到底かないません.
さて私が特に優れた技術を有しているかに書きましたが, ヤフオクで入手した他のマニア製作の品物を色々見てきた結果, 集電に線状のピアノ線を車輪に軽く接触させ, 台座には絶縁の角材を用いて, ほとんどお金を掛けずに工夫しているものがいろいろあり, まったく脱帽で, なにもエンドウの高価なシューセットを用いなくても工夫力で解決できます.
上記記載後に考えが変わりました. 実は集電機構でピアノ線やその他の加工で,車輪に一定度以上の圧力が常時加わる改造はよくないことが判明しました. ギクシャク運転や車体の過剰なぶれ, そして異音, さらには走行抵抗となりやすくてスピードも低下します.従って, 柔らかい燐青銅の薄い板がわずかに, しかし確実にタイヤに当たっているという集電が最も理想的です.