高松亜衣さんの CD「Diavolo Concerto」ヴァイオリンリサイタル with オーケストラを自家用車内で繰り返し聴いている. 収録曲目は1. ヴィエニャフスキ「ファウスト」の主題による華麗なる幻想曲, 2-4.タルティーニ「悪魔のトリル」5-7. パガニーニ ヴァイオリン協奏曲第 2 番ロ短調「ラ・カンパネラ」8. パガニーニ/河野音弥 編「カプリス第 24 番」であり, 演奏は高松亜衣(ヴァイオリン)平石章人(指揮), タクティカートオーケストラ(管弦楽)収録日は 2023.12.26, 場所は杉並公会堂大ホールである. 同日の DVDも発売されているのでこれはライブ録音からの CD という事になる. 私は 45年間ほどヴァイオリン協奏曲を聞いてきたが, パガニーニのヴァイオリン協奏曲第 2 番は不思議なほど聞いてこなかった. チャイコフスキーに始まり, ベートーベン, ブラームス, シベリウス, メンデルソーンなどとお決まりの通俗的なものばかり聞いてきたからか, うっかりパガニーニは抜けていた. しかも第 3楽章のラ・カンパネラはリストのピアノ曲のことと勘違いしていたから, まったく非常識の極みである. ちなみに庄司紗矢香・ ズービン・メータ指揮の 1番は CD で持っている. パガニーニの 2 番は今, 繰り返し聴いているが聴けば聴くほどすばらしい. 三つの楽章間のバランスがとても良くとれている. どの楽章かひとつが魅力に欠けるということが協奏曲では良くあるが, これはそのようなことがない. 第 1 楽章ではチャーミングなフレーズが次々に繰り出されてくるし, ヴァイオリンの奏法もフラジオレット, スピカート, ピチカートなど多様に披露される. 亜衣さんは you tube の中でカデンツァは自身が作曲したものを使用すると言っておられたが重音が多用されたり, 第 3 楽章のテーマを小出しにしたりと, 非常にうまく書けている. 第 2 楽章のメロディーはとてつもなく美しく女性的なやさしさにあふれている. そして第 3 楽章は例のラ・カンパネラと来ているから申し分がない. 技巧的な難しさのみでなくすべてのフレーズの有機的な調和がすばらしい. チャイコフスキーのような憂愁, 情熱にはやや欠けるが, そうではなく, 古典的な様式美を感じるので, イタリアの美術品や古い建築を眺めているような感じがする. ヴィエニャフスキーはポーランドの作曲家でヴァイオリン協奏曲がよく知られており, 私も 1, 2 番をギトリスの演奏した LPを持っている. これらは旋律も親しみやすく聴きやすい曲であるが今回の幻想曲はなじみがなかった.しかし何回も聞いているうちに叙情性がある名曲と気付かされた. さてこのアルバムはバランスが良くとれている. いずれも粒ぞろいの超絶技巧を要する曲である事は間違いないし, 情緒的にどこか共通点があって, とても良く考えられたアルバムといえる. ちなみに Diavolo とは悪魔のことらしいが, ファウストは悪魔と魂の取り引きをした有名な話であり, タルティーニは悪魔のトリルという名の付いた曲が取り上げられおり, さらにパガニーニは作曲家自身が悪魔と契約していたという伝説で有名である事からこのアルバム/リサイタルにふさわしい命名になっている. 私としては彼女の演奏には何の文句もなく, すばらしいの一言につきる.

