難病施策の混沌

政府の難病施策はわかりにくい. 患者の医療費の減免措置が特にわかりにくい. 軽症特例というのがあって, 軽症のために難病の基準を満たさなくても年に一定の医療費がかかれば軽症高額で減免されるという. 患者はあとでお金が返ってくるよといってもなかなか理解をして頂けず, お小遣いが減るからと言い高額な治療にはなかなか入れない. どのような手続きでこれが実現するのか医師側にもわかりにくい. 1年分の領収書を持って書類を提出してもさらに認定に3ヶ月はかかるのに. 実現までに時間がかかりすぎる. 一定の条件で上限設定がされるが上限の金額は所得に応じて変わる. そして高額かつ長期というのがあって, 年間1回の医療費が5万円以上が6回以上あれば減免される. 患者は場合によってはこれを保健所からご教示いただくし,自分で勉強してきてこれにして下さいという.

これが何を意味するかというと患者さんは8週間ごとに外来を訪れることになる.どうしてかというと1年365日とするとこれは52週+1日であって, 9週間毎に受診すると年5回しか来れず, 8週間では6回来ることになる.

もし年間の医療費が30万円であると5回の受診でも年間の患者が支払う金額は一緒であるが, 30万円以上ではそうはいかない. 難しい話だが患者さんにとっては6回来ることにするのがもっとも確実に医療費を節約できる.

さて私はボツリヌス毒素を用いた治療をしているが, 難病の患者さんでボトックスを来院時に施注している方がいる. ボトックスは8週間では打てない. 60日空けないと打てない仕組みになっているが曜日で外来が設定されているという診療の都合で9週間後毎で打っている. この場合患者は6回以上来院することがない. どこかで1回余分に受診して相応の医療費を支払う必要がある.

さてこの国民の医療費が膨化している時代に厚労省は患者の来院回数を増加させようというのだろうか. 診療すれば再診料にしろ何にしろ余計にお金がかかるのではと私は考えてしまう.

さて厳密に難病の認定を進め正直に患者を診療すると患者数は増加の一途である.落ち着いてくれれば次回の診療は9,10,11,12週後にと考えてきたが,これらを8週間に縮めることは難しい.

では難病の患者さんは全てが医療費が高額なのか. そうではない. 高額な医療費でありかつ患者さんの負担を減らそうとすれば医療費が高額にならないような工夫をしなくてはいけない. そこには医師各自の裁量が入る余地がある. 高額で有効な治療を勧める医師もいれば, 高額でも見合った効果がないと思われる薬剤を少し控えようとする医師もいるかもしれない.

現状の施策は少しわかりにくいのでもう少しだれでも理解できる制度にしていただきたいものだ.

 

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